書評「補欠廃止論」+日本サッカー界の発展に必要な事

 「補欠廃止論」は2016年に出版されたセルジオ越後さんの著作です。

 

著者プロフィール

 セルジオ越後さんは1945年にブラジルのサンパウロで産まれました。

 ブラジルの名門コリンチャンスでプロ選手となり、ブラジル代表候補までなったこともあるとか。

 その後、日本で初めての元プロ選手としてJSL(日本サッカーリーグ)の藤和不動産サッカー部(現湘南ベルマーレ)でプレーしました。

 現役を引退してからは日本の50万人以上の子供たちに直接サッカーの指導を行い、文部科学省や外務大臣から表彰をされています。

補欠を廃止するべきとは

 本作には中学・高校サッカーについての補欠廃止論や、補欠に付随する問題と日本が団体スポーツで勝てない理由、日本サッカーがもっと盛んになるため、日本のプロサッカーチームや国民全体に求められることなどが綴られています。

 例えば、著者が補欠を廃止をするべきというのは、いわゆるマンモス校などで多くの部員がいる部活では試合に出るチャンスが全くないベンチ外の選手が多く発生してしまうことが問題だと言います。

 サッカーはボール拾いや練習のために行うべきではなく、試合をするためにプレーするべきということです。

 本書にはどこどこの部活がそうだったという具体例はありませんが、高校サッカーにおいて、自分が知っている限りでも多くの都道府県のベスト8、4くらいのチームになると、部員数は一つの部活で100人に迫ったり、それ以上の数になったりもします。

 特に私立校ではサッカーが強いと評判になれば、新たな部員が集まりやすくなりますし、推薦で入学させることもでき、部員数は大きく膨れ上がります。

 こういった、有望な選手が多く集まるにもかかわらず、緊張感があり、本番である公式戦に出れるのは11人と交代選手数人のみです。

 その中にはもう少し経験を積めば大きく伸びたかもしれない選手がいたかもしれないのに、それを補欠(ベンチ外あるいはベンチ入りしていても試合に出れない選手)選手が多くなってしまう仕組みをしている現在の日本のサッカーの制度が問題だと著者は指摘しているわけです。

 サッカーの競技人口が増えているのに、補欠制度のせいで多くの成長の芽が摘まれていては日本のサッカー界のレベルアップは難しいということになります。

日本サッカーがW杯で優勝するために国民の意識を変えるべき

 過去のワールドカップで優勝した国には共通の特徴があり、それはその国の多くの人々に根付いていて、サッカーをはじめとして、スポーツへの関心を高めていると著者は述べています。

 それは「宗教」による習慣・意識の差であると言います。

 結果的に、習慣的にスポーツが行われる海外と、スポーツをする習慣が身につきづらい日本ということになってくるわけです。

 また、日本のサッカーのレベルが上がらないのは、メディアのスポーツに対する姿勢もあると言います。

 日本では、サッカー中継において、芸能人の起用が目立ちますが、海外の強い国では、そういった見栄えの良さよりも、戦術についての話し合いが重視され、チームが試合に負けた時においては選手や監督がテレビ出演するだけでなく、サポーターが出演して敗戦に向き合い、原因や対策について論じあうそうです。

 自分が思うに

メディア批判派
サッカーの戦術に興味がないのはメディアが協力しないから!
メディア派
視聴者の過半数ががサッカーの戦術についての番組を求めているなら、喜んで放送するさ。でも実際に大衆受けするのは戦術解説じゃあない。こっちもお金が稼げないと仕事としてやってけない。戦術についての解説番組を求めるのならまずは意識改革をしてきてください。話はそれからです。

 こういう、いたちごっこのような状態が現状なのかなと思います。

 とはいっても、国民1億人の意識改革など到底できない訳で現実的にはメディア側が折れることがある程度必要であるように感じるのは当然であるとも思う……

 そのために必要な知識を身につけることに役立つ本を一つ紹介しておきます。

 特にサッカーの観戦知識がほとんど無いという方向けに最低限のことが一冊読むだけで理解できるかと思います。

 一度に多くのことを理解しようとすると、大変ですが、見るべきポイント、考えるべきポイントについて大事なことに絞って書かれていて、呑み込みがしやすいように感じます。

 

まとめ

 「補欠廃止論」では補欠という制度が生まれやすいサッカー協会の規則の問題点を指摘することをはじめ、そのほかにも、日本のサッカー界の発展のためにやるべきこと、できるようにしたいことがちりばめられており、セルジオ越後さんの考えていることが多く分かってとても参考になりました。

 自分は著者の本は初めて読みましたが世界の実情についての比較が多くされていて、初めて知れたことが多かったです。

 単行本版も発売されています。